「き」 気持ちを込めたリアクション言葉

「えっ!すごい!うわー!ほんとう?」


前回までの「あ」「ど」「ど」、そして「プラスアルファのコツ」のページでは、名前を呼び、話しかけ、雑談のとっかかりをつくり、「ど~?」を意識して相手に質問を投げかけました


会話なので、ここまでの3つだけでも、もしかしたら全てこのような順番で進まないかもしれません。特に、相手が話し好きなタイプだった場合、こちらが名前を呼んで挨拶をしただけで、向こうからいろいろと話を振られることも多いと思います。

そうなったら、『あどどきす法』は使えないのかと言えば、もちろんそんなことはありません。安心してください。


……さて、そのように、実際の会話の場面では、「相手」と「私」で交互にやりとりをするかたちになります。相手がよっぽど無口だった場合は、今までやってきたような順番でこちらが話を進めればいいだけですが、たいていの人はこちらの話しかけになにかしらリアクションを返してきます


そのようなとき、例えば相手が話し好きでどんどんこちらに質問を投げてくるようなときには、こちらは思うままにそれに答えれば大丈夫です。

そして、そのような相手の場合は、「コミュ障」

さんでも割と話が続きやすく、気が楽なのではないかと思います。相手がどんどん質問してくれて、勝手にいろいろ話してくれて、「会話が途切れて気まずい…」という思いをする必要ががないのですから。

そういう相手の場合、とくに「セリフの形」を意識しなくても、きかれたことに答えていけばいいだけなので、変に考えず、そのようにしてください。更に、「セリフの形」を使えば、その相手はより喜んであなたと話をしてくれるでしょう。


「雑談が苦手」の意識がある人が困るのは、どちらかというとそういう「一人でも楽しくいろいろな話をしてくれる」タイプの社交的な人を相手にするときよりも、「相手は特別コミュニケーションが苦手な人とは思えないけど、自分と会話するときは話が途切れて気まずそう」な相手と接するときだと思います。


(逆にかなり無口で、誰ともなにも話さないタイプと一緒にいるときは、かえって「話さなくてもいい」「似たもの同士かも」という妙な安心感があったりします。)


私は、もちろんどんなタイプを相手にしているときでも役に立つ方法だと考えていますが、特に「コミュ障」に一番ハードルが高い「無難な普通のやりとり」をできるようになるために、「セリフの形」はとても有効だと思っています。


話が横道にそれてしまいました。いつもいつもスミマセン(^^;)

話を戻します。


今回のパターンですが、そんな「実際の会話のやりとり」にとても重要な要素となります。「リアクション」です。もっと詳しく言うと、「感情を込めたリアクション言葉」です。


これだけではわかりにくいので、例を見てみましょう。


「感情を込めたリアクション言葉」を含めた会話の例


例)

A『おはようございます、〇〇先輩』(名指し)

B『ああ…〇〇さん…おはよう…』

A『なんだか、お疲れみたいですね』(「~ですね」型)

B『そうなんだよ、昨日夜1時過ぎまで残業してたから…あんまり眠れてなくて』

A『えー! そんな遅くまで、どうして…』(「えー!」…といった言葉が、今回の「リアクション言葉」です。そして「どうして…」が「どー?」型です)

B『お客さんからクレームが入って、緊急で対応してたらなんだかんだいってそんな時間になっちゃってたんだよ』

A『うわー…、大変でしたね』(「うわー…」が、「リアクション言葉」、「大変でしたね」が「~ですね」型です)


今回、始めて対話方式の例文をつくってみました。ちなみにこの人がどんな職業に就いているのか、私にもわかりません(笑)


このように、会話の合いの手のように、相手の言葉に何かしら音を発してリアクションするのが今回のポイントです。


言葉だけの例をあげると、例えばこんなものが考えられます。


例)

「うげ…」「ひええええ」「うそっ!?」「うわぁ…」「えっ!」「すごい!」「本当っ!?」「え…!」「へえー!」「きゃー!」「おおーっ!」


もちろん、無表情でいうわけにはいかないので、できる範囲で表情をつけ、声にも「色」をつけて言ってみましょう。


もし、「顔芸」に自信があるとか、自分のキャラがそういうタイプなら、あえて声を出さないで表情だけでリアクションしても、おもしろいと思います。


このような、感情が入ったクッション表現があると、相手はよりあなたと会話しやすくなるでしょう。この「リアクション言葉」ですが、いわゆる「ノリ」を生み出し、相手に「話を聞いて感情移入してくれている」「楽しんでくれている」感を伝えやすいです。そしてそれはもちろん、二人のよい関係づくりに有効です。


この「リアクション言葉」ですが、このような文字だけで見るとまるで「ビジネス」のような場面では使いにくいという印象を受けるかと思いますが、大丈夫です、使えます。

例えば「本当っ?」を「本当ですか?」に変えて、驚きの表情はプライベートのやりとりのときよりも少し控えめにすればいいのです(でも、その「程度」もその人のキャラによります)。


「コミュ障」の方は、自然体で振る舞うと「はぁ…」とか「へー…」とかばかりになったり、顔の表情や声の調子も、あまり相手に感心がなさそうになりがちかもしれません。

「雑談が苦手」で「楽しくない」のですから、わざわざ話しかけてくる相手や話さなくてはいけない状況にうんざりしていて、そういう反応になるのはある意味当然なのですが、そこを踏ん張って! 少し意識して反応を変えてみましょう。


「心から楽しくないし、つまらない話題を振られて、なんでわざわざ嘘ついて盛り上げてやらないといけないんだ」と、思う方もいるかもしれません。分かります、私もそう思います。

私も、「無難な会話」ができるようになって、人とのコミュニケーションの苦手意識がだいぶ薄れてきた今でも、人との会話がいつもいつも楽しいわけではありません。

それでも、「楽しい」「関心のあるふりをする」だけで、かなり人とのコミュニケーションが良好になることを経験し、改めて「演技すること」も重要だと実感しています。

「自分を偽る」ことに、イライラすることもありますが、それ以上に人とのコミュニケーションが円滑になることで得られる利点のほうが大きいです。


「コミュニケーションが得意」で、飲み会に出ればいつも「盛り上げ役」なタイプの人も、もしかしたらいつもいつも「心から楽しい」わけではないかもしれませんよ。むしろ彼らは、「本音」と「建前」をうまく使い分けられるが故に、コミュニケーションが得意なのかもしれません。


「いつも本音で生きる」「人にこびは売らない」のは別に悪いことでもなんでもなく、ただの「個性」なのですが、ここでは「無難に雑談が続く」ことを目標にしています。どんな相手とでも「無難に雑談を続かせる」ために、「感情を込めたリアクション言葉」はとても有効なので、ここでは「プライド」も「クールなキャラ」も捨てて、「楽しんでる風」「関心のある風」の演技をしてみましょう!

なにも、「リアクション芸人」のようにならなくてはいけないということではないので、気軽に考えて取り入れてみてください。


……例えば、おとなしくて無口で、普段は無表情な女の子が、何かをプレゼントされたときに「わぁ…!」と小さく声を出して、少し驚いたような嬉しそうな表情をしたら、すごく印象的だと思いますが(少なくとも私はそういうの好き)、そのような感じです。「自分が自然にできる範囲」で、試してみてください。



「クールなキャラ」でも、雑談ができるできないには関係はありませんが、「コミュニケーションが苦手」な自覚のある方が、はじめからそれを目指すのは、いささか難易度が高いです。下手をすると、「ただの暗いやつ」「取っつきにくいやつ」になります……。